一般社団法人SRHR Japan

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9月29日、JOICFPさんの協力のもと、SRHR ピアエデュケーター養成講座を開催しました。

SRHRピアエデュケーター養成講座とは

RISTEX「どこでもドアプロジェクト」では、地域の支援者間ネットワークが有機的に機能するためのさまざまな仕組みづくりに取り組んでいます。

活動の中で、若者の居場所作りをさまざまに行う機関で、月経や妊娠など性や健康にまつわる話題は比較的受け入れられやすく、ニーズが顕在化しやすいことが指摘されてきました。また支援者間ネットワークの中でも、性や身体について気軽に当事者と話しあい、適時適切に医療機関につなげることができる養成講座の必要性が語られていました。

そこで、国際協力NGOジョイセフ(JOICFP)さんの協力を得て、性や心、身体についてピアとして若者と語れる人材を養成する講座を京都市内で実施することになりました。

「I LADY.」になろう

9月29日。秋空が高く冴える日、京都市中京区の青少年活動センターには講師のために訪れたジョイセフ職員2人の姿がありました。机をセッティングし、先に搬入していた荷物を解いてテキパキ配下します。クリアファイル、ジョイセフの広報誌、SRHRノート、コンドーム。

会場提供にご協力くださったのは一般社団法人京都市ユースサービス協会さんです。職員さんも一緒に準備をしてくださいました。参加者は20代以下12名を含む22名。前方に学生を中心とした若者参加者、後方に支援職を中心とする参加者が座ります。

まず、SRHRと「I LADY.」について、ジョイセフ講師から話がありました。

SRHR (Sexual Reproductive Health and Rights:性と生殖に関する健康と権利)は、人が生まれながらに持つべき権利である「人権」の一つです。例えば、SRHRには、誰もが大好きなパートナーと手をつなぎ、安全に道を歩けることであり、安全で合法的な中絶ケア、自分に合った避妊手段を手に入れる環境があることであり、すべての子どもとその家族に質の高い性教育(包括的性教育)が行き届いていること、などが含まれます。

I LADY.とは、「I」を主語として、「Love:自分を大切に」「Act:自分から行動」「Decide Yourself:自分らしい人生を自分で決める」という意味を込めた造語です。SRHRに関わる決断は「パートナーを持つのか」「誰とパートナーシップを組むのか」「子どもが欲しくないときの避妊をどうするのか」「子どもを持つ人生にするのかしないのか」など、ライフステージと隣りあわせの決断です。その決断のとき、自分らしく選択できるかどうかはとても重要です。I LADY.ピアアクティビスト事業は、ジョイセフから研修を受けた20代の若者が、同世代の皆に気づきを与え、自分らしい生き方について考える輪を広げる活動をしています。本講習を終えると、20代の方々はジョイセフ公認のI LADY アクティビストとなります。そして、SRHRの情報を知り、自分で選択して、言い切る人を「I LADYist」と呼びます。本講習で「I LADY CARD」を活用しながら皆で「I LADYist」になりましょう、と呼びかけられました。

グラウンドルールは下記です。

① 自分の変化も他人の変化も受け入れよう
② さまざまな価値観を尊重しよう
③ 答えたくないときはパス
④ プログラム中に聞いた個人情報は口外しない

I LADY CARD

〜DATINGの例〜

早速I LADY CARDが各テーブルに配られます。カードには、DATING、PERIOD、SEX、PREGNANCYなどの組があり、各組には7枚の絵が5枚ずつ含まれています。

まずDATINGの35枚が各テーブルに置かれ、5人それぞれに7枚のカードが配られます。

・物を投げる
・即レスしないと怒る
・おごってもらうのが当たり前
・下着や裸を撮影
・位置情報をチェック
・友人や家族関係を制限
・同意なしで体を触る

そんな言葉が絵とともに描かれたカードをそれぞれが手にしたとき、「このカードについてテーブルの5人で話し合ってみてください。どんなふうにカードを使うのも自由。並べてみるのもいいし、1枚1枚話しあってもいいです。今パートナーがいない人は、友人や家族との関係性に置き換えて考えてみてもいいと思います」と説明がありました。

若者テーブル、支援者テーブル、それぞれで自由な会話がスタートします。

20分ほど経ち、各テーブルで話し合われた内容がシェアされました。

「私たちは、罪深いものから順にカードを並べました。意外とやってしまいがちなこともあるかもしれない」
「位置情報アプリは便利だけれど、ちょっとしんどくなったからやめるね、と、ときどきアカウントをオフにするのもありかも」
「支援者チームでは、実際に学校で相談を受ける事例などについて話しあっていました」

など、ほとんどのメンバーが初対面であるにも関わらず、世代を越えて、カードを活用することで話題が広がり、それぞれが意見を伝えあい、刺激されあったようです。

DATINGセッションの最後に、ジョイセフ講師から、このカードを使ってファシリテーションする際の「伝えるポイント」「配慮するポイント」についての説明がありました。

伝えるポイントとしては、デートDVは当事者が気づかないところで始まり深刻化していくケースが多いが、背景には根深いジェンダー規範が関係することもあること、また、当事者でなく周囲の人としてできることを伝えることも大切なこと、が挙げられました。

配慮するポイントとしては、性暴力が年齢や学年、地位、性別や性的嗜好、職業や人種など関係なく起こっていること。トラウマのある人やデートDVの当事者もいるので、退出自由にする、イヤホンの使用や飲食をOKにするなど、無理なく参加できるように声をかけること。相談を受けた場合は本人の希望を確認の上、相談機関を紹介することなどが挙げられました。さらに、参加者がトラウマなど過去の経験を共有してくれたときは、相手の話を丁寧に聞き、そのまま受け止め、その人の意思を大切にしましょう、一方的に助言して話を進めたり、安易に励ましたりしないようにして、他の参加者にもそのように促しましょう、と呼びかけがありました。

〜I LADY CARDトーク〜

続いてSEXがテーマのカードセットも同様に進み、お昼休みに。

お昼休みは、学生と学生、支援者と学生、支援者と支援者、皆が積極的に交わりあい、それぞれの興味や普段の活動内容など話しあいました。

午後は、PREGNANCY、PERIODのカードセットを、テーブルにいる人たちがファシリテーションしながら扱います。

カードセットの最後に配られたのはSRH。価値観に関する言葉が多く含まれていました。これまで何時間も、SRHRの話題をオープンに対等に話しあえた仲間だからこそ、話せる内容です。それぞれ考えを深めあい、議論しあう、貴重な経験になりました。

最後は、コンドームワークです。各テーブルに1つずつ配られたコンドームを、参加者皆で開けて取り出し、マジックやメンバーの指を使って装着練習をします。「この前、コンドームワークの講習を受けたところです」という若者がとても上手に付け方の説明をしてくれるなど、場がさらに盛り上がりました。

ピア活動の計画を立てる

テーブルメンバーが席替えになり、学生と支援者が混じりあって座る形になりました。

学生たちには、「いつどこで、何を目的として誰を対象にI LADY CARDを使ったワークをする?」というシート。支援者には、「自分の拠点でピアと若者エンパワメントを効果的に実施するには?」というシートが配られます。

「自分が勤務している高校に来てくれない?」「学習会をしているところで開催してみては?」「自分のゼミでやってみようかな?」「出入りしている居場所支援のところで1回やってみる」など、さまざまな具体的な意見が出ます。それは、ぜひ、実現させようと、SRHR Japanと京都市ユースサービス協会はともにその場でコミュニケーションツールでつながり、参加者が継続して計画を話しあえる場をセッティングしました。

最後、ジョイセフから20代の参加者にI LADYアクティビスト認定証の授与式がありました。また、「I LADY CARD」2組をご提供いただき、本養成講座は終了となりました。

今後、I LADY CARDを使うときは、京都市中京区の青少年活動センターにて貸与します。

おわりに

SRHRについて、性や心、身体について、ピアとして気軽に語れる人材を養成する講座は大盛況にて終了しました。今後引き続き、SRHRがさまざまな場で語られ、それをきっかけに支援の「どこでもドア」が開かれるよう、取り組みを続けます。